「切実な本」のフェア、はじめました

植本一子さんの「家族最後の日」や岸政彦さんの「ビニール傘」、

またお二人それぞれとどこかでつながる上間陽子さんの「裸足で逃げる」……

1月後半から2月はじめにかけて、個人的にビッグタイトルな本の出版が

相次ぎました。

どれも読後感は重くて暗く、その人の人生がぎゅっとつまっていて、

激しく揺さぶられるのだけど、読んでよかった、と思えるかんじ。

ただ、自分だけではなく、このような本が最近多くの人から注目され

痛切に必要とされている空気を感じていました。

 

また、やや違う文脈ではあるのですが他方で

「さびしすぎてレズ風俗へ行きましたレポ」や

「夫のちんぽが入らない」といった、その人の生きづらさを克明に

つづる本が世間で大きく話題になり、取り上げられることも増えています。

 

このような本をどういう本、と呼べばいいのだろう…と思っていた矢先に

ちょうど荻窪の書店Titleの辻山さんが書かれた

「本屋、はじめました」を読んで、はっとする表現に出会いました。

 

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〈最近思うことは、「切実な本」こそが売れているという事です。

「真面目な本」と言ってもいいかもしれません。著者が書くしかなかった、

自らの底と向き合い、編集者がその想いを汲み取るしかるべき形で包み、

それを丁寧な販促で伝えていく。マーケティングの発想からは、

そうした本は生まれない。

マーケティングから売れる本の何が良くないかと言えば、

必ず違う似たような本に取って変わられるからです。言ってみれば

「替えがきく」という事なので。本は、元は一冊一冊が

「替えがきかない」はず。替えがきかない「切実な本」にこそ、

人の興味はあると思います。〉

・・・・・

ああ、そうか、切実な本と言えばよかったんだ、と思い至ったのですが

気づけばこの文章に会う以前にも、自分自身「切実」という表現を

本にたいしてあちこちに使っており、また、意識してみると他の人が

「切実」という表現で本を評しているのもよく見かけるようになりました。

辻山さんのいう「切実」と、私が感じた「切実」はまた少し

違うと思いますが、私は切実を「重やさしい」と言い換えることも

できるのではないか、と感じています。

どの本も、決してすぐ明るくハッピーな気持ちになれるものではないですが

その人が人生を賭けて這いつくばるようにして書いた本は

生きることを肯定してくれるような不思議なやさしさに溢れています。

 

というわけで、植本一子さんや岸政彦さんの本を中心に、

「パン屋の本屋」でも、このお二人の世界とどこかつながるような…

痛みなしでは読めないような、しかし光を感じるような本を集めて

並べてみました。

「パン屋の本屋」は小さいお客さまも多いので、親子で見られるように

絵本も何冊かフェアに入れました。

大人はときに、衝撃の強い本について、冗談半分で

「こんなのこどもに読ませても大丈夫?」と言いますが、

過激で安易な暴力描写や性表現とはまったく異なる次元のものだと

私は思っています(もちろん、お子さまご本人が読みたくないのに

無理に出会わせる必要はないと思いますが…)。

 

どれも心からお勧めできる、すごい、

すごいとしか言いようのない本ばかりです。

ぜひお店で手に取っていただければうれしいです。

また、その際にはあなたの「切実」な本も1冊教えていただければ

そんなにうれしいことはありません。

 

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*荻窪の本屋さん、Title http://www.title-books.com/

(行くたびに震えがくるような素敵な本屋です)

*「家族最後の日」「裸足で生きる」

ともに、感想コメントを特設ページに寄せさせていただきました

http://www.ohtabooks.com/sp/kazoku/

http://www.ohtabooks.com/sp/hadashi/